ーイタリアの銘革/プエブロー
イタリアといえばレザーの生産地として有名ですが
中でもバダラッシ 社の革は、とても魅力的です。
何が魅力的かというと
「劇的に変化する革」というところにあると思います。
このバダラッシ 社の革に出会うまでは
長い道のりでした。
僕がレザークラフトを始めた
2000年頃には、浅草橋の協伸エルさんに通っていて
倉庫で1枚1枚革を広げてもらい
革を選ばせてもらってました。
この頃扱っていたのは、モンタナ社のリオショルダー。
通常はこんなことはやってくれませんが
相当な時間を使って、対応してくれたエルさんには
今でも感謝しております。
革は10cm×10cmを1デシという単位で表しますが
当時は素材のランクがあり、状態が良いものと悪いもので
ランクづけされ、低いランクのものは
1デシ¥70程度で今の半額以下の値段で購入できました。
低いランクといっても、多少のキズ程度です。
今では考えられませんね。
そんな中、いつの頃か忘れてしまいましたが
狂牛病という、牛の病気が流行り
革の価格が高騰した時期がありました。
この件を調べてもなぜか記録が出てこないので
自分の勘違いなのかどうか、わかりませんが
とにかく革のデシ単価が高騰したのです。
そこで色々と調べていたところで
浅草のサライ商事さんにたどり着きました。
サライさんに電話で伺ったところ
「うちにはすごく良い革がある」と。
おそらくリオショルダーは魚油(魚が主成分のオイル)でなめしているのだけど
「うちには牛脚油でなめしている革があるから、見てみろ」と
牛脚油(牛の足の骨から抽出される動物性油脂)は芯まで染み込ませるのに
非常に多くの時間がかかるが、その分、油分が抜けにくいのだ」と
もちろん、こんな偉そうな言い方はされていおりませんが
その初めて聞いた言葉の数々に
胸が踊らされました。
そして、そのままサライ商事へ。
社長さんの案内で倉庫に連れて行ってもらい
1~2時間ほど説明を受けたかと思います。
世界の銘革を色々と見せていただき
大変な刺激を受けました。
それは2007年のことだったと思います。
それからは、ずっとバダラッシ 社一筋で
ミネルバリスシオ 、プエブロは
今でも定番で取り扱っています。
さて、話が長くなってしまいましたが
「プエブロレザー」とは
どんな革なのか。
-PUEBLO / Badalassi Carlo tannery-
創業者であり、研究家でもあるバダラッシ カルロ氏が自身の理論を実証するために
1000年以上前からのバケッタ製法という革の鞣し技術を忠実に再現し
牛脚油を芯まで浸透させることにより、他の追随を許さない独特の素材を生み出すことに成功しました
イタリア植物タンニンなめし協会が認める
古典的な植物タンニンなめしの製法の中でも
牛脂をメインとした秘伝のオイルを使用した
バケッタ製法で作られる「プエブロ」は
あえて表面を削り 素材が持つ力強さを露にしました
カサカサとした紙のような素材感は独特で
手に良く馴染み プエブロのみが持つ素材感は圧巻です
「半起毛」した銀面は
ご使用ごとに 毛羽立ちがなくなり
たっぷりと染み込んだ牛油が上がって行き
銀面が潤いのある色艶に包まれ、
唯一無二の質感をお楽しみいただける素材となります。
プエブロレザーでお財布を作りました
プエブロ/グリージオ
プエブロ/グリージオ
最大の魅力であるプエブロのエイジングとは
上:約1年使用
下:未使用
ー初心者さんは1枚革を購入すべきー
また、サライさんでは
カット販売は行っておりません。
全て1枚革での販売です。
初心者の方には、1枚革なんて高いし
買っても使いきれない、という方も多いかと思います。
しかし、技術を習得するなら
1枚革を購入すべきです。
プエブロはショルダー(肩~首)という部位を使った革となりますが
1枚の革でも、伸びやすい方向や、伸びの少ない部位、
床面(革の裏)の繊維が荒い箇所など
使う部分によって状態が様々なため
「どこにどの部位を使うべきか」という判断をするのには
銀面(表面)、床面(裏)をじっくり見定め
最良の部位を見極める必要があるからです。
革と対話(コミュニケーション)をするということです。
それは、作業を進めていく工程の中でも
”最も難しい工程”と言えるほどです。
この、最も難しい工程を
最初から外して、モノづくりの経験を重ねるのは
大変もったいない事だと思います。
ぜひ、これからレザークラフト を始める方には
最初から1枚革を購入していただき
素材の隅々までじっくり観察することで
素材の特徴を理解し、上達への近道となるので
実践していただければと思います